それどころか、仕事熱心な男でよほどの体調不良でもなければ会社を欠勤したことだってない。だから毎月のサラリーは安定的で裕福ではないにしても必要以上にお金に苦労する結婚生活でもなかったはずだ。
主婦業に関して、ああして欲しいこうして欲しいとか、こと細かい要望を押しつけてくるわけでもない。
さらに、酒も飲まないのだから用事が無い限りは毎日きちんと我が家に帰ってくる。がしかし……である。
女遊びは〝用事〟に含まれていた……。
女遊びをされるぐらいなら、酒癖のわるい男であって欲しかったなんて言う私はどうかしてるのか?
視点を変えれば、とてもよくできた夫だなあと思う。
むしろ、女癖がわるいだけで酒も飲まないし勤めもしっかりこなす男に、私が高望みしているだけだったのかもしれない。
けれど、こうして〝女遊び〟と言葉で書けば「ああ、どうしようもない男だな」と書き流せるかもしれないが、今、この瞬間に自分以外の女となにをしているのかを想像しながら屈辱に耐えて夫の帰りを待つ妻の心情は言葉に出来ないドロドロとしたものじゃないか。
やるせなさと憤りを何でごまかすこともできない私は、夫と楽しんだ過去の旅行のことを思い出して自分の感情を消し流すしかなかった。
今を過去でごまかす?
そんな気持ちだった。
お金じゃない。
自由でもない。
夫と結婚する前、もとはと言えば夜の華やかな世界で生きていた私。
私が結婚に求めたものは、月並みだけど愛情だった。
100人の男に愛されることよりも、夫ひとりの愛情が欲しかった。スポンサーリンク